コロナ禍前は、着いたらろくに話もしないうちに、織り上がったばかりの注文の布や、新しく作るサンプルを次々に見せられ、そうだ、私の役割はバイヤーなのだ、と自覚することが多かった。マテリアルでしか繋がっていないのは、すっきりした健全な関係でもあり、それは悪いことではなかった。
しかし、コロナ禍中、注文の総数が激減する中で、ほとんど数量を減らすことなく布を発注し続け、新しいデザインを送り続け、拙い会話を繋げてきた私たちには多少の連帯感が生まれた気がする。
少しトランザクショナルに捉えられているうちの仕事を、もう少し昇華させたいと、いうところから、タゴールの言葉を読み合うに至った。
それぞれ携帯で検索し、読み合ったことばのなかで、”Inspiration follows aspiration(願えば閃く)”は、センテンスとしてはシンプルだが、前向きでコロナ禍が明けて新しく始めるのに掲げるのに良いと思えた。
スローガン風なのが、共産色の残るベンガルの風土にもあっているように思えた。
最初に織ったのはガムチャ。織り師も左右反対に織ってしまったり、混乱もあったが、銭湯のタオルのような風情になったのが意外に良かった。
(2022年)