HANDWOVEN SILK 手織シルク

インドでは、紀元前後、シルクロードの時代には唐から輸入されたシルク糸が綿織物の産地にも入り、絹織物が織られるようになった。やがてインドでも野蚕を採り、家蚕を育てるようになり、今ではインドも一大シルク大国となっている。


インドのシルクの種類は大きく4つある。野蚕のタッサー種、エリ種、ムガ種、家蚕のマルベリ種である。それぞれ蚕が摂取する植物(葉っぱ)が異なる。野蚕のシルクは、元来森の中で蛾が飛び立ったものを採取し、煮沸、つまり殺生しないことからアヒンサー(不殺生)シルクと言われる。主な産地は、カルナタカ州(マルベリシルク)、アッサム州や東北州(ムガシルク、エリシルク)ビハール州、チャティスガール州(タッサーシルク)など。


野蚕は煮沸しないので、セリシンといわれるタンパク質が多く残り、それが独特の滑りやシャリ感を伝える。インドではサリーはパリっとノリがきいたのを纏うのがイキなのだが、なかでもタッサーシルクはそのハリが立体的な造詣をもたらすため、ノリがなくても一枚布のサリーが美しく羽織れる。暑さが厳しいインドの夏でも肌にまとわりつかず、涼しい。やわなものばかりでは遊びがないと考える着物の世界でも、タッサー種はその独特のテクスチャーでもてはやされてきた。


ショールやストールにしても、立体的な造形を楽しむことができる。キヤリコでは、タッサーシルクを織る地域とカンタの地域が割とオーバーラップしていることから、カンタのショールなどにタッサーシルクを用いることがしばしばある。ムガシルクはアッサム地方の一部でしかとれず、元来の地色である鈍い金色がザリ(金属糸)に並ぶ高価なものとしてサリーに使われてきた。もう来年にはなくなると脅されて久しいが、幸いまだ作りつづけられている。


キヤリコが最近力を入れているのは、エリシルク。バングラデシュではエンディと言われており、庶民のシルクとして広く普及している。繊維が短く、機械紡績ができない。手で紡ぐしかない。番手も太く、ざっくりして、やや動物的な滑りと湿り気を感じる。つまり、冬には保湿効果が期待できる。LIVING BLUEのカンタ布シリーズにも、多く用いられている。


マルベリシルクは、多くのデザイナーにも供給させていただいている人気生地である。独特の黄身を帯び、鈍く柔らかな光を放つ。マルベリシルクから作られるやや厚手のマッカシルクも素朴ですばらしい。


ノイルシルクといわれる、クズ繭(紡績の際にでるごく短い繊維)を紡績した手織のシルク生地もお作りしている。クズ繭、と言われているが、手間がかかるからか、価格は普通のシルク並みか、それ以上のこともある。水通しして使い続けると、肌に馴染み、表情がでてきて面白い。


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